2020年10月『電話法律相談』はじめました。

埼玉県 春日部法律事務所

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事例集Legal consultation




相続


相続(生前贈与)について

父が亡くなり、相続人は兄と私だけです。遺産は2千万円相当の財産があります。先日兄より、「遺産を半分ずつ分けよう」と提案がありましたが、兄は5年前に仕事を独立した際、亡父より開業資金五百万円の贈与を受けており、このような援助を受けていない私には兄の提案は納得できません。亡父に遺言はありません。今後どのような協議をしたら良いでしょうか?
民法903条1項は、相続財産に特別受益を加えたものを相続財産とみなし、これを基礎として各相続人の相続分(一応の相続分)を算定し、特別受益を受けた者については、この一応の相続分から特別受益分を控除し、その残額をもってその特別受益者が現実に受けるべき相続分になる、としています。
 今回、お兄さんが生前に受けた贈与は生計の資本として贈与を受けたものと考えられ、特別受益に当たる可能性が高いと思われます。
 そこであなたとしてはお兄さんに対し、2千万円相当の財産と特別受益5百万円を加算した2千5百万円を相続財産とすべきこと、一応の相続分としては各自がその半分の1,250万円になること、そして現実に受けるべき相続分は、お兄さんが1,250万円から既に受け取っている5百万円を差し引いた750万円相当の財産になり、あなたが1,250万円相当の財産になることを申し入れ、さらに話し合いをしてみたらいかがでしょう。



相続(寄与分)について

亡父の遺産相続についての相談です。
 亡父は足が不自由だった為、3年前私の住まいに転居しました。相続人は私と私の弟だけです。先日私の弟より、遺産を半分ずつにしようと提案がありました。私は父の扶養や介護をしてきましたので、この点を考慮した分け方を希望しております。
 今後どのような再提案をしたらよいでしょうか。なお、父の遺言書はありません。
民法904条の2は、共同相続人中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がいる場合は、他の相続人との間の実質的公平を図るため、その寄与相続人に対して相続分以上の財産を取得させる「寄与分」という制度を定めています。
 そして、その「寄与分」の額ですが、まず当事者間で協議し、その協議が成立しない場合には家庭裁判所が審判で定めることにしています。
 「寄与分」が問題となるケースは、相続人が被相続人の仕事を無償で手伝っていた場合や、被相続人を扶養したり、介護したりしていた場合です。
 そこであなたとしては、弟さんに対し、遺産のうち一定の金額を「寄与分」として自分が取得したいと主張し、更に、残った遺産を半分ずつ分けたいと再提案してみたらいかがでしょう。
 なお、寄与分額の算定方法は-一概には言えませんが、-扶養に関してであれば「実際に負担した金額」、介護についてであれば「療養看護の日数や付添人の日当」等が参考になると思います。



相続・遺産分割の実際

最近知人が亡くなりました。この知人は内縁関係にある人と一緒に生活していましたが、相続人は全くいません。この知人の相続はどのようになるのでしょうか?
まず相続人は、第1に子とその代襲相続人。第2に直系尊属。第3に兄弟姉妹と代襲相続人がなり、配偶者はこれらの各相続人と並んで常に相続人となります。
 今回の質問は、このような相続人資格のある親族が全く存在しないという前提でお答えします。
 まずこのような場合、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、故人の相続財産を清算します。
 相続財産管理人は、必要な範囲内で相続財産を管理換価し、一定の期間内に申し出のあった相続債権者、受遺者及び特別縁故者に対し相続財産の分配を行い、その後に相続財産が残れば、これを国庫に引き継ぎます。
 ここで特別縁故者というのは、相続品がいない場合に、被相続人の療養看護に努めた者などがいる場合、その者からの請求に基づき、家庭裁判所が相続財産を分与する制度で、内縁関係にあった者はこれに該当する可能性があります。
 なお、特別縁故者は、相続人が存在しない場合の制度なので、相続人が1人でもいる場合、内縁関係にある者など相続人資格のない者が相続財産の遺贈を受けるには、被相続人の作成した遺言者が必要になります。



相続を放棄する場合

私は幼い頃父と別離しており、これまで父の所在を知りませんでした。
 ところが先月、金融機関から連絡があり、数年前に父が亡くなっているが、父には借金が100万円残っているので、これを支払うよう請求されました。
 私は、父のこの借金を支払わなければならないのでしょうか。
相続は被相続人の死亡により発生します。従って、あなたのお父さんの相続も、その死亡により発生し、あなたはその相続分に応じて、プラス財産のみならず、マイナス財産(借金)も継承することになります。
 しかし民法は、相続の承認・放棄の制度を設け、相続人の意思により、一応生じた相続の効果を確定させるか否認するかを選択できるようにしております。
 そして、相続の放棄をするには、相続人が「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなけらばならないと定めており、この起算点は、相続の原因たる被相続人の死亡の事実を知り、それによって自分が相続人になったことを知った時とされております。
 そこであなたの場合、サラ金からの電話があるまでお父さんが亡くなったことを知らなかったのですから、直ぐに家庭裁判所で相続放棄の手続きを取れば、この借金を免れることができます。
 ただ、相続放棄をすると、相続人でなかったことになりますので、プラス財産も承継できなくなることをご注意下さい。



自筆証書遺言について

私には子供が3人おります。配偶者はすでに亡くなっており、現在資産として、自宅と預貯金を所有しております。最近子供達から、将来兄弟の仲がこじれないよう、遺産の分け方を決めておいて欲しいと言われました。私は「遺言書」というものを聞いたことがありますが、どのようなものがあるか教えて下さい。
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の主に3つのタイプがあります。このうち、公正証書遺言は公証人役場で作成するもので、作成に当たり公証役場でアドバイスを受けることができます。また、秘密証書遺言はは手続きが少し複雑なので、今回は自筆証書遺言について説明します。
 自筆証書遺言は、遺言者が、遺言の全文、作成年月日および氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。そして、内容を加除訂正する場合は、遺言者が変更箇所を指示し、これを変更した旨を追記して、特にこれに署名し、かつ変更箇所に押印しなければ、その効力を生じないとされています。
 最近ではパソコンが普及しておりますが、このような機械を使用して作成されたものは、自筆証書とはなりませんので、ご注意ください。
 また、用紙が数枚になっても、それが綴じてあるとか、一つの遺言書であることが確認できれば良いとされていますが、後で連続性が問題になるよう、各用紙の綴り目に契印を押したほうが良いと思います。



弟が貸家を相続したが。

父が一年前に亡くなりました。
 相続人は私と弟の二人で、遺産は自宅と貸家でした。
 貸家の賃料収入は、父が亡くなってすぐに、私が父とは別の銀行口座を開設して、そこに賃料を振り込んでもらい、管理していました。
 先日、遺産分割協議が成立し、私は自宅を、弟は貸家を取得しました。
 そうしたところ、昔大学の法学部に通っていた弟が、遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって発生するのだから、父が亡くなってからの家賃は、さかのぼって自分のものになると言ってきました。
 家賃は、全部弟のものになってしまうのでしょうか。
確かに法律では、遺産分割は、相続開始の時(=父親が亡くなった時)にさかのぼって効力が生じるとされています。
 しかし、最高裁判所の判例では、遺産である賃貸不動産の賃料は、「遺産とは別個の財産」であり、「後になされた遺産分割の影響を受けない」とされています。
 そして相続開始から遺産分割までの賃料収入は、「各共同相続人が、その相続分に応じて取得する」とされています。
 つまり、お父さんが亡くなってから、先ほどの遺産分割協議が成立するまでの賃料は、あなたと弟が相続分に従って半分ずつ取得することになります。
 なお、遺産分割協議が成立してからの賃料は、貸家を取得した弟だけのものになります。



判例にみる法定相続人と生命保険受取人

先日、父が亡くなりました。相続については特に遺言書もなく、法定相続人である私、兄、妹の3名で、遺産を法定相続分に従って分割する話を進めていたのですが、生命保険証書が見つかり、死亡保険金の受取人が妹とされていました。その額は、遺産総額に匹敵するほどの額です。
 しかし、私は、妹が法定相続分に加えて、生命保険金も受け取るということには納得できません。
遺産整理中に生命保険証書が見つかって、その内容に相続人間で不公平さを感じる場面は想像しやすいと思います。その不公平感は、保険料は契約者たる被相続人のお金から出されたものであって、保険料として支払わなければ本来相続財産を構成していた、ということもあるでしょう。
 しかし、残念ながら判例(最判昭和40年2月2日)は、生命保険金請求については相続財産に含まれず、受取人の固有の権利であると判示しています。
 したがって、これを亡父の遺産だとするのは難しいでしょう。
 もっとも遺産分割の手続きで、各相続人が実際いくらの財産を遺産から取得することになるかの具体的相続分を決めるにあたっては、この保険金を考慮することができるとした判例(最判平成16年10月29日)があります。
 この判例は受取人である相続人と他の相続人との間に生ずる不公平が、到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、民法903条の類推適用により、持戻しの対象(相続人の特別受益)になるとしています。
 要件としては厳しいですが、額の大きさのほか、生活実態等に照らして判断が為され、この判例が適用されることになれば、遺産取得割合が是正され、不公平さが改善されることになります。



同居の親、死後の…

亡父の関係で、私を含む子ら3名で遺産分割協議をしておりますが、亡父の遺産には、亡父が自宅として使用していた土地と建物があり、亡父と同居していた私が、現在、この自宅に居住しております。
 ところが、先日の協議の際、他の相続人から私に対し、父が亡くなった後は、この自宅は子ら3名の共有になるから、賃料を支払うべきではないかと言ってきました。どのように考えたら良いでしょうか。
相続の案件で、相続人の一人が亡親と同居していたというケースはよく見られますが、親元から離れて暮らしている相続人より、親と同居していた相続人が親の死後も無償でこの自宅に居住することについて納得できないという声を聞くことがあります。
 この点について、最高裁判所は、平成8年12月17日付判決にて、「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居をしてきたときは、特段の事情がない限り、被相続人と右の相続人との間において、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用賃借契約が成立していたものと推測される。」と判示しました。
 この判決のいう「使用賃借契約」とは、民法593条にて、無償での物の賃借とされており、この判決が適用されるケースであれば、あなたは、他の相続人との関係において、遺産分割時まで、無償で亡父と同居してきた自宅に居住することができることになります。
 ただし、この判決は、「特段の事情がない限り、…使用賃借契約が…推認される」とも判示しておりますので、他の相続人において、上記推認を覆す事情を証明することができれば、この事情に基づき、改めて事実認定が為されることになります。



経営者の問題/従業員の問題


「労災保険」について

私は個人で製造業を営んでおり、数人の社員を雇っています。先日、そのうちの1人が、作業中に怪我をしてしまいました。わたしは労災保険に加入しておりませんが、今後の治療費等についてはどのように対処したら良いでしょうか?
 また、この社員の復帰のめどが立ちませんので、この社員を解雇したいと考えております。問題はないでしょうか?
まず、労災保険については、労働者を1人でも使用する事業所は、原則として、当然に保険関係が、成立するとされています。従って、これまで相談者が労災保含険料を支払っていなくても、業務中に怪我をした社員は、労災保険の給付を受けることができます(なお、相談者は国に対し、さかのぼって保険料を納付しなければなりません)。
 次に労災保険とは別に、相談者自身の安全配慮義務違反が問題になることがあります。例えば、法的に必要とされる安全装置が不備だったり、これを作動させていなかった場合など、事業者に安全配慮義務違反が認められた場合には、事業者に、慰謝料や後遺症等に関する損害賠償を命じた裁判例があります。
 最後になりますが解雇に関してですが、労働基準法第19条は、労働者が業務上負傷した場合、療養のために休業している期間と、その後30日間の解雇を禁止しています。ただ、長期療養で一定の要件を満たす場合には、例外的に解雇制限が解除される時があります。



「準備作業は労働時間か?」について

私は飲食店を営み、パート社員を数名雇っております。お店には制服があり、就業前に事務所で着着替え時間は替えさせておりますが、この着替え時間は勤務時間に入れておりません。また、多数のお客様が来店した際には、休憩時間中でもこれを対応するよう指示しておりますので、休憩時間中に制服を脱いだり、事務所から外出することも禁止しております。
 先日パート社員から、この着替え時間を勤務時間に含めてほしいと言われました。私は、着替えは仕事の準備であり、休憩時間中は仕事をしていないので、いずれも勤務時間に含まれないと考えていますが、どうなりますか?
労働時間I(勤務時間)とは、使用者の指揮命令下で、労働時間を提供した時間を言います。実作に従事している時間のみならず、作業の準備や後処理を行っている時間も、その準備行為を事務所内で行うことが使用者から義務付けられている場合には、使用者の指揮監督下で労働を提供したこと、つまり、実労働時間になります。
 また、休憩時間についても、同様に実労働時間とみなされる可能性があります。それは、休憩時間中、労働義務解放されているか否か、場所的・時間的な拘束の程度等から判断されます。
 本件では、事務所で制服に着替えることを義務付けているようですし、休憩時間といっても、就業しなければならない可能性があり、休憩場所も限定されていますので、いづれも労働時間に当たる可能性が高いと思います。



「パート社員の解雇は?」

私は個人で製造業を営み、数人のパート社員を雇っていますが、先日その1人が、仕事の方法について不満を言ってきたので、解雇することにしました。何か問題がありますか?
まず、世間一般でいうパート社員には、大きく分けて3つの累計があります。その1つは、勤務時間を限定する雇用(①)、もう1つは、例えば3か月間などと雇用期間のみを限定する雇用(②)、また、両方が合わさった雇用(③)mこ多いと思います。
 このうち①の雇用形態は、②③のようにあらかじめ雇用期間を定めておかなければ、労働法上は、期間の定めのない雇用、つまり正社員と同じ雇用契約が締結されていることになり、その解雇は、労働契約法16条の適用を受けますので、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない限り、その権利を汎用したものとして、その解雇は無効になります。
 次に②③の雇用形態は、期間満了時に更新しなければ雇用契約は終了しますが、その期間満了前に解雇する場合には、労働契約法17条の適用を受けますので、やむを得ない事由が認められなければ、やはりその解雇は無効となります。
 従って、ご質問のようなケースでは、ほとんど解雇の要件を満たすことはないと思われますので、解雇が無効とされる可能性が高いと思われます。
 このように、パート社員であっても、労働者保護規定の適用が除外されるわけではありませんので、ご注意ください。



「賃金支払」の確保等に関して

サラリーマンとしてお勤めの方は、毎月会社から決まった額の給料が口座に振り込まれていると思います。しかし、ある日突然、その当たり前のことが行われなくなってしまったら…。今回はそのようなケースを取り上げます。
賃金は、「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」(労働基準法11条)で、人々の生活的基盤になるものですから、法律上、その支払いが手厚く保護されています。
 例えば、会社が賃金の支払いを遅滞した場合、年6%の遅延利息が発生します(商法514条)。法律は、遅延利息というペナルティーをかけることで、会社に対し、期日通りに支払うよう促しているわけです。
 さらに、賃金が支払われないまま労働者が退職した場合には、事業者は、退職日の翌日から支払いをする日までの期間について、その日数に応じ、賃金の額に年14.6%を超えない範囲で、政令で定める率(施令1条はこれを14.6%としています)を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない、としています(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項)。
 賃金が未払いとなることで、会社との信頼関係が崩れ、結果として退社を余儀なくされるといったケースは少なくありません。その場合、この14.6%という高い利率は賃金確保のための強力な武器となることでしょう。



契約社員の「雇い止め」について

私は製造業を営み、契約社員(期間1年)を5名雇用していますが、不況の影響で仕事が減ってしまったので、来月末に契約が切れる1人の社員(過去2回更新)に対し、契約を更新しない旨、申し入れようかと思っています。
 何か問題があるでしょうか?
雇用期間を定めた契約社員は、いわゆる正社員(雇用期間を定めない社員)と異なり、契約期間の満了により、雇用契約が終了します。
 しかし、契約の更新を繰り返していたような場合には、雇い止めが無効とされる可能性があります。
 労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇について、その権利を濫用したものとして無効とすると定めています。
 仕事が一時的とか、季節的というわけではなく、有期契約が、実質において、期間の定めの無い契約と異ならない場合や、有機契約の更新に対する合理的な期待がある場合には、「雇い止め」にも、この法律を類推適用した裁判例があります。
 従って、あなたの場合も、今後もし裁判となり、この法律が類推適用されますと、不況を原因とした雇い止めの有効性は、整理解雇の要件(人員削減の必要性、解雇回避のための努力を尽くしたこと、解雇される者の選定基準及び選定の合理性、事前の説明・協議義務を尽くしたこと)の観点から判断されますので、雇い止めをされる前に、この整理解雇の要件を十分に検討すべきと思います。



求人票の時給記載は?

私はサービス業を営んでいます。
 昨年11月に求人票を出し、翌12月からパート社員を雇いました。私は求人票に、時給1,000円と記載しましたが、このパート社員を雇う際、2ヶ月間の試用期間中は時給が800円になるとだけ伝え、特に試用期間後の時給については説明しませんでした。
 現在、この社員は特に問題なく仕事をしていますが、私は、景気が思わしくないので、今年の2月から正式採用するに当たり、時給を800円に据え置こうと思っております。
 何か問題はありますでしょうか?
まず、求人票の記載が、当然に雇用契約の内容になるわけではありません。
 しかし、時給の額というのは、雇用契約の重要な要素になるところです。
 パート社員の求人票に時給を記載した場合、あなたが採用に当たり、正式採用後の時給が求人票と異なることを説明していない限り、応募者は求人票の記載を信用するのが通常です。従って、これに記載された時給が、雇用契約の内容とみなされる可能性が高いと思われます。
 そうすると、時給を800円に据え置くことは、雇用条件の不利益変更になりますので、原則として、そのパート社員の同意がなければ変更できないことになります。また、例外的に、就業規則の変更により減額する場合でも、裁判所は、具体的事情に基づく合理性等のとても厳格な要件を必要としております。
 社員の採用には、採用前に条件を吟味しておくことが肝要です。



過失の負担割合?

私は、運送業を営んでおり、従業員を雇用していますが、先日、その1人が業務中に荷崩れを起こし、荷物の一部を駄目にしてしまったので、荷主に損害10万円を弁償しました。私は、今後、この弁償金を、その従業員に負担させようと考えていますが、どうしたら良いでしょうか?
まず、今回の荷崩れの原因を調べて下さい。そして、その従業員が仕事中に通常求められる注意義務を尽くしていた場合には、その従業員に損害を負担させることはできません。
 次に、従業員に過失があっても、運送業を営むに当たり日常的に発生する程度のことであれば、従業員の勤務態度等によると思いますが、原則として従業員に損害を負担させることはできないと思います。これは使用者が従業員を利用して利益を上げている以上、そのリスクは使用者が甘受すべきと考えられるからです。
 以上とは異なり、従業員に重大な過失や故意がある場合には、その従業員にも損害賠償義務が発生します。ただし、過失の場合における従業員の負担割合は、按分されることが多く、例えば、最高裁判所の昭和五一年判決(タンクローリー事故を起こした運転手に対する使用者の求償事案)は労働条件、勤務態度、加害行為の態様及びその予防についての使用者の配慮等の諸事情を考慮し、損害の公平な分担という見地から、求償額(従業員に負担させた金額)を損害額の四分の一に制限しました。このような判決を参考に、従業員の方と損害の負担割合について話し合ってみたら如何でしょうか。



民事トラブル


出会い系サイト被害について

今回は、出会い系サイトに関する被害について取り上げます。出会い系サイトを利用するためには、通信料のほかにサイト運営業者に利用料を支払うことが必要となっており、通常ポイントを購入して、掲示板を見る、メールを送る、メールを読む、画像を見るなどの各操作ごとにポイントがかかるという制度となっています。

 ところで近時、懸賞サイト、占いサイト、着メロや着うたをダウンロードできるサイトなど無料のサイトにアクセスしたところ、本人の意思とは無関係に出会い系サイトにも同時登録されてしまい、被害に遭うという事例が増えています。

 登録と同時に利用料を請求されるケースもありますが、女性会員は無料であるとか、ポイントをサービスでくれるなどといってあおり、興味本位で利用してみたところ、いわゆるサクラが利用者にポイントを使わせるために会う約束などをしてメールのやりとりに引きずり込む事例も多いです。さらに、実際に会ってみたところ、出会い系サイトを利用したことを家族に暴露するなどと脅され、金品をねだられるという被害もあります。

 対策としては、利用料等の請求があっても安易に連絡したり氏名や住所・勤務先などの個人情報を教えない、執拗な請求はドメイン指定拒否の設定をし必要に応じてアドレスを変更する、メールの内容は証拠として残す等がありますが、お一人で悩まずに、すぐに、消費生活センターや自治体等の法律相談にて相談されるとよいです。




少年の刑事事件

私の息子は中学3年生ですが、昨日、同級生たちと一緒になって他の中学校の生徒を殴り、怪我をさせたということで警察に逮捕されてしまいました。中学生なのに、大人と同じように逮捕されるなんてことがあるのでしょうか。また、息子は今後どうなるのでしょうか?
中学3年生の少年といえども、犯罪に当たる行為をすれば、大人の場合と同様に逮捕されることはあります。どういうのことかと言いますと、まず、①少年法は、20歳未満の人を「少年」、20歳以上の人を「成人」とし、②少年の刑事事件については、少年法で定める以外は一般の例による、としていて、少年の刑事手続について、成人の刑事手続きとは異なる特別の規定を設けていますが、③少年の逮捕を禁止することまでは定めていないので、少年といえども成人と同様に逮捕されることはあるのです。
 そして、身体拘束された少年の、刑事事件の一般的な手続きの流れは、逮捕→拘留→家庭裁判所に送致→観護措置→審判ですが、少年の場合には、「やむを得ない場合でなければ」拘留はできないとされていて、成人の場合よりも、拘留される場合が制限されています。
 また、観護措置とは、通常、少年鑑別所に送致することを意味し、多くの場合には、家庭裁判所が少年に対する処分を決定する手続である審判の日まで、3週間から4週間、少年鑑別所に収容されることになります。



女性の再婚禁止期間設定判決の波紋

新聞でご存じの方が多いかと思いますが、平成27年12月16日、最高裁判所は、女性の再婚禁止期間に関する違憲判決を出しました。その内容は、民法733条1項が、女性について、前婚解消等から六か月経過後でなければ再婚できないと規定しているjことについて、このうち100日の期間設定部分のみ合憲とし、これを超える期間設定部分を違憲(憲法違反)としました。
 そもそも、憲法上、男女を問わず婚姻の自由が尊重されるべきことは当然ですが、民法733条1項は、父姓の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の予防を目的に、婚姻解消等から六か月間、女性のみに再婚を禁じており、これが事柄の性質に応じた合理的根拠のない差別を禁止した憲法14条1項に違反するかどうかが争点になりました。
 今回の判決は、民法772条が婚姻成立から200日経過後に生まれた子をその婚姻の夫の子と推定し、離婚の日から300日以内に生まれた子を離婚した夫の子と推定しており、離婚後100日間の再婚禁止期間を設ければ父姓の推定の重複を回避できるとして、民法733条1項がこの期間を超えて婚姻を制限しているのは違憲としました。この判決に関与した裁判官の1人より、離婚後300日以内に再婚し、かつその期間内に子が生まれた場合、その子が前夫の子と推定されることになるが、その推定自体に疑問があるので、科学的・客観的な判定により父子関係を形成する方法をとるべき等の補足意見が付されています。今後、本判決に基づく民法改正が為されますが、更なる議論が期待されるところです。




え!?飼い主に民法718条の賠償

私は、自転車で道路左側を走行中、道路脇の邸宅の門扉から、突然、犬が吠えながら出て来たので、驚いて転倒し、怪我をしてしまいました。その犬は、よく見ると鎖に繋がれており、飼い主は、私に飛びかかる危険が無かったのだから責任はないと主張しております。飼い主には本当に責任がないのでしょうか。
民法718条は、動物の占有者は、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任を負うとする一方、その動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、責任を免れるとしております。本件では、犬があなたに向かって吠えて、飛び掛かろうとしたものの、実際には鎖に繋がれており、飛び掛かっておりませんので、そもそも飼い主に過失があるのか、また過失が認められたとして、あなたの怪我の責任を飼い主に負わせるべきかが問題になります。
 この点、平成18年に大阪地方裁判所が参考となる判決を出しております。この判決は、本件に似た事案において、飼い主には漫然と飼い犬を連れて自宅から出て、飼い犬が被害者に飛び掛かるような様子で近づいて吠え掛かるのを許した過失があるとしたうえで、飼い犬が被害者に接触していないとしても、驚いた被害者が自転車の運転操作を誤り転倒することは容易に想像できるとして、飼い主に民法718条の損害賠償責任を認めました。したがって、本件でも、飼い主に損害賠償の責任が認められる可能性があると思います。



子供が人にケガをさせてしまったら

私は、先日、自転車で道路を走っていると、狭い脇道から中学生の乗った自転車が急に飛び出してきたことから、これを避けようとして転倒し、大怪我をしてしまいました。しかし、その後、この中学生や親から謝罪どころか、連絡すらありません。私は、今後、治療費や休業損害等の賠償を請求するつもりですが、子の中学生の親に請求することができるでしょうか。
中学生程度の少年が過って他人を怪我させる等の不法行為をした場合に、その親が損害賠償の責任を負うか否かは、その不法行為との関係で、親が子に対する具合的な監督義務を果たしていたからによります。
 東京地方裁判所の平成19年5月15日判決では、13歳の少年が自転車事故を起こした事案で、親は子に対して、交通ルールを守って走行するよう注意し、監督する義務があるとしたうえで、事故後の両親の子に対する言動や被害者に対する言動(この判決では、親の被害者に対する言動が「保険会社に任せたので、うちは関係ない。」というものだけであったと認定しています。)より、この両親は子に対する上記監督義務を果たしていなかったと推認されるとして、両親の損害賠償責任を認めました。
 あなたの場合ですが、中学生の親から連絡が無いとのことであり、親が本件事故を知らないか、全く関心が無い様子が伺われますので、親の子に対する監督義務が果たされていない可能性があります。この監督義務が果たされていないことが認められれば、親の損害賠償責任が認められる可能性があります。



養子縁組を継続し難い重大な自由とは?

私は長年農業をいとなんできましたが、後継者がおらず、甥を養子にしました。
 しかし、その甥は、農業を手伝うと言っていたにもかかわらず、実際には仕事が忙しいと言って、あまり手伝ってくれません。そして、私が文句を言いますと、逆ギレして暴言を吐く始末で、私は現在、離縁を考えております。
 どのような場合に、離縁が認められるでしょうか。
民法814条1項3号は、離縁の実質的要件として、「縁組みを継続し難い重大な事由があるとき」と定めており、諸般の事情を総合して、養親子としての生活の継続を到底望み得ない状態に立ち至っている場合がこれにあたる、とされています。
 そして、最高裁判所の昭和60年12月20日付判決は、専業農家の養子縁組の案件で、養子の養親に対する暴行の経緯や養子の和合に向けた真摯な態度の欠如等を理由に、養親子関係の破綻を認めました。
 なお、高等裁判所は、同じ案件で破綻を否定しましたが、その理由として、定職に就いている甥を養子にしたことや、養子の農作業に対する態度が不満で養親が叱責したことから、養子が一時的に暴行したと認定し、このような暴行は一般の親子関係でも見られることと述べました。
 今回の質問ですが、単純に養子が期待どおりに農業を手伝わないということだけを理由に離縁を主張するのは難しいと思います。ただ、この最高裁判決は、特に老齢の養親に対する養子の暴行は、養親子関係を破綻に導く行為として重視されるべきと述べられており、養子の暴言の頻度、その強さや内容によっては、離縁が認められる1つの理由になり得るものと思います。



親権者は子を代理して何でもできるのか?(代理権の濫用について)

私は、幼い時に父を亡くし、母子家庭で育ちました。親権者は母でした。母は、私が未成年の頃、私の親権者(代理人)として、祖父から相続した私の土地に、抵当権を付けていたのです。その抵当権は、叔父(母の弟)が代表を務める会社の債務を担保するものでした。私は、当時、そんな事実は知りませんでしたし、いくら母だからといって、私の財産を叔父の利益のために使われるのは納得できません。付けられた抵当権の登記を消すことは可能でしょうか。
まず、未成年の子の父・母(親権者)であるからといって、子の財産に関する事を全て行えるものではありません。親権者と子との利益が相反するような場合(例:子を親の借金の保証人にする)、親権者は、子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条)。そして、利益相反か否かは、行為自体を外形的・客観的にみて判断され、親権者の動機・意図は影響しないので(最高裁昭和42年4月18日判決)、子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、利益相反行為に当たりません。そこで、代理権(親権)の濫用であると主張してみることが考えられます。これは、代理権の範囲内でも、代理人が自己・第三者の利益を図る目的があるとき、行為の相手方がその目的を知り又は知ることができた場合は、無効になるという法理です。そうすると、質問者様の母と抵当権者は、叔父の会社という第三者の利益が図られることは分かっているはずで、濫用とも思えます。ところが、平成4年12月10日最高裁判決は、親権者に広範な裁量があることを踏まえ「子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情」がない限り濫用に当たらないと判示しました。したがって、質問者様のご主張が認められるためには、この特段の事情を立証する必要があるといえます。



借地借家


アパートの大家さんから更新を拒絶された

現在、賃貸アパートに家族3人で生活していますが、先週、大家さんより突然、「あと半年で賃貸借の期限が切れるけど、更新をするつもりはないので、きちんと明け渡してくださいね。」と言われました。私はこれまで2回契約更新をし、暫くはここに住んでいたいと思っています。どうしたらいいでしょうか。
大家さんの明渡しを求める理由が定かではありませんが、原則として、あなた方は、アパートを出て行く必要はないと思います。まず、アパートの賃貸借契約は、主に借地借家法という法律が規定していますが、この法律は、大家の更新拒絶や解約申し入れを有効とする為に「正当事由」が必要であるとしています。
 この正当事由の存否は、賃貸人と賃借人の建物試用を必要とする事情のほか、建物の利用状況、建物の現状、さらに立退料の申し出の内容等を総合的に検討して、最終的に裁判所が判断します。
 ですから、大家さんの明渡しの申し込みが認められるためには、例えば、どうしても家主自身又はその子どもが居住しなければならないとか、建物の老朽化が著しく、倒壊の危険があるとかの特別の事情が必要になりますし、その事情にもよりますが、明渡しということになれば、あなた方の生活基盤が失われてしまう訳ですから、多くの場合、大家から相当の立退料の申し出がなければ、正当事由が認められることにはならないと思います。



離婚


離婚に際して子の親権、養育費は?

結婚して10年ほど経ちますが、どうしても夫婦で考え方が合わず、話し合った結果離婚することになりました。
 離婚に先立ち、夫婦で何を決めておけば良いでしょうか。私たちの間には、小学生の子供が1人おります。
まず子供に関しては、親権者をどちらにするかということと、養育費を決めます。この金額は、東京家庭裁判所が作成した算定表を参考にすることができます(インターネットで「裁判所・養育費算定表の使い方」を検索してください)。
 さらに、親権者にならない親については、子供との面接交渉を決める場合があります。
 次に財産関係です。財産分与といって、夫婦で築いた財産(相続した財産や結婚前に築いた財産は対象外)の分け方を決めます。割合は半分ずつとするケースが多いですが、具体的な分け方は協議して決めます。
 一方が預金を、他方が家財道具を、という分け方も、双方が同意すれば可能です。また、今回は問題にならないかもしれませんが、一方に暴力や不定など離婚原因となった事実がある場合には、慰謝料を決めることがあります。その金額はケースによって開きがありますので、弁護士に法律的な相談をなさった方が良いでしょう。
 その他、主婦の場合などは、離婚後、収入が安定するまでの生活保障として一定の金銭を受け取ることもあり、これもあらかじめ取り決めておく必要があります。



離婚に際し、子の親権は?最終的には家裁判断も。

結婚して7年目、子供が1人おります。現在、夫と離婚に向けた協議をしておりますが、お互いに子供の親権を希望しており、話し合いがつきません。どうしたら良いでしょうか?
まず親権とは、①子の身上監護権及びその義務。②子の財産管理権及びその義務。の総体を言います。あなたが①の身上監護権のみを希望し、夫が②の意味での親権だけを希望しているのであれば、これを分離した合意をして離婚することも可能です。
 しかし通常、夫が①と②の総体としての親権を希望している場合がほとんどでしょうから、この場合について説明します。
 まず、話し合いでどうしても解決できなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、その中で再度、親権の帰属について話し合いを行います。そこでも決着が付かなければ、家庭裁判所における離婚訴訟で解決を図ることになります。なお、親権の判断基準をおおざっぱに説明しますと、①母親優先の基準(乳幼児については、特別の事情がない限り、母親の監護養育にゆだねるべきとする考え方)②原状尊重の基準(成長した子供の意思を尊重すべきとする考え方)などがありますが、現実的には、父母の心身の状態、生活態度、経済状態、監護補助者の有無、子供の意思等を総合的に考慮して、子供の福祉の見地から、家庭裁判所が定めることになります。



「性格の不一致」だけで離婚できる?

娘は結婚して1年足らずですが、最近夫と離婚したいと言ってきました。そこで私が事情を聴くと、夫が優しくしてくれない等と言い、要するに「性格の不一致」が理由のようです。このような理由で、離婚できるのでしょうか?
民法は、夫婦ともに離婚の意思があれば、その届出だけで離婚を認めています。なので、夫も離婚を希望していれば、その届出をするだけで正式に離婚することができます。しかし、夫が離婚を希望しない場合は問題になります。民法は婚姻が成立した以上、相手方の意思に反して離婚するには、法定の離婚原因を必要としています。これは、「不貞行為」等の他、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とされており、本件のような「性格の不一致」が、この「重大な事由」に当たるか否かが問題となります。
 裁判では、「性格の不一致」を理由に離婚を認めたケースもありますが、一般的にはこれだけで離婚を認めるケースは少ないでしょう。というのは、夫婦であっても性格が異なるのが通常であり、双方の努力によって円満な夫婦関係を築くべきである以上、継続的に努力したが、もはや夫婦関係の回復を期待できない、というようなケースでなければ破綻が認められないからです。
 設問のケースでも、いきなり離婚手続きを進めるより、まずは夫婦関係の円満調整を目的とした家事調停を含め、きちんと夫婦間で、夫婦関係を回復させるための話し合いをすることをお勧めします。



離婚の場合の財産分与は? -築いた財産の折半が大勢-

私は結婚して20年になりますが、夫と離婚することになり、私が自宅マンションを出て行くことになりました。
 本日お尋ねしたいのは、この自宅のことで、これは結婚後、夫が2000万円の住宅ローンを組んで購入したものです。現在、残債が500万円になっています。
 最近私が不動産屋さんで調べたところ、最低でも1000万円で売れるそうです。しかし夫は、このマンションが夫名義であり、これを処分する意思がなく、しかも負債が残っているのだから、離婚に際し、この清算は必要ないと言い張っています。
 本当でしょうか?
いいえ違います。
 離婚に際し、夫婦の財産関係を清算する制度を「財産分与」といいます。
 あなたの質問にある自宅マンションであっても、その時価から住宅ローンを差し引き、残金が残るのであれば、その価値は夫婦で築いた財産になります。よって、財産分与の対象になります。
 その分与の割合ですが、夫に財産形成の特別の寄与があった場合を除き、通常、夫がサラリーマンで、妻が専業主婦のような場合でも、これを半々とするのが実務の趨勢だと思います。
 したがって、仮に上記の調査価格を時価とすれば、マンションの実際の価格(実勢価格マイナス住宅ローン)は500万円になりますので、妻にあたるあなたは、その半分である250万円の財産分与を請求する権利があります。なお、夫はこのマンションに引き続きお住まいになるようなので、その支払い方法は夫婦で協議する必要があるでしょう。



成人した子(学生)の養育費は…

私は10年前に夫と離婚し、子を引き取りました
 ところで、現在、子は大学に通っていますが、元夫は、子が成人したら養育費をストップする、と言っています。
 私の収入だけで学費を支払うのは難しいのですが、どうしたら良いでしょうか。
養育費の議論は、従来、専ら未成年の子を対象に行われてきたと思いますが、近時、大学、大学院、専門学校等へ進学する者が増えていることなどから、20歳に達した子についても、養育費が問題にされるようになりました。
 この点に関連した裁判をご紹介します。
 4年制大学に通学する成人した子が親に対して扶養料を求めた案件で、横浜家庭裁判所は「扶養義務者は、自己の成人に達した子に対しては、扶養義務として、特段の事情がない限り、…子に高等教育を受けさせるべき義務を負わない。」として、申し立てを却下しました。
 ところが、不服申し立てを受けた東京高等裁判所平成12年12月5日決定は、4年制大学に進学し、成人に達した子に対する親からの学費等の扶養の要否は、子の学業継続に関する諸般の事情を考慮した上で、判断すべきであって、子が成人に達しかつ健康であることをもって直ちに子が要扶養状態にないと判断することは相当でない旨述べ、横浜家庭裁判所に審理のやり直しを命じました。
 したがって、あなたとしては、子が成人した後の養育費について、元夫との間で、その不足する額、不足するに至った経緯、奨学金、子のアルバイト収入及びお二人の資力等の諸事情を考慮して、子の扶養の要否や扶養の額を協議すべきだと思います。
 なお、父母の間で協議が調わないときは、あなた又は子自身から、家庭裁判所に対し、これを決めるよう申し立てることができます。



個人事業主の事業用の資産分与は可能か

私は現在、離婚協議中です。
 夫は会社の代表者になっていますが、実質的には個人事業主です。私は、離婚協議に際し、この事業用の資産も財産分与の対象にして欲しいと申し入れました。しかし夫は、会社と個人の財産は別だと言い、この提案を取り合おうとしません。
 どうしたら良いでしょうか。
まず、離婚に関して、婚姻中夫婦の協力によって得た財産を清算する必要があり、これを財産分与と言います。
 ところで、財産の帰属主体は、法人格毎に考え、その法人格は「人」と「会社」に認められているため、会社に帰属する財産は、個人に帰属する財産と区別されます。東京高等裁判所昭和57年2月16日付判決は、この点、福岡高等裁判所昭和44年12月24日付判決は、医療法人に関する事件で、事実上、夫の個人経営と大差ない場合、財産分与の金額を決めるに当たり、この法人の資産収益関係をも考慮に入れるべきと述べました。
 そもそも、会社には資産だけでなく負債の問題もあるなど、プラス財産だけでは実体を把握できないところがあります。そこで、あなたとしても、適正な財産分与を実現すべく、夫との間で、そのような問題も考慮に入れた協議をするべきであると思います。



高齢者・知的しょうがい者の財産管理


「任意後見契約」とは?

私は独身で、子供がおりません。私はまじめに働いて貯金をしてきましたし、今はまだしっかりしていますが、将来認知症になった場合の財産管理などが心配です。今のうちに何かできることはないでしょうか?
任意後見契約をすることが考えられます。
 任意後見契約とは、ご本人が、自分の信頼できる人(任意後見受任者)に対し、認知症などにより物事を判断する能力が不十分な状況になってしまった場合、自分の生活や財産の管理などに関する事務を委託して、代理人になってもらう契約です。
 任意後見受任者は、ご本人が選んだ人であれば資格に制限はなく、親戚や友人、弁護士なども可能です。
 もっとも、「任意」後見契約とは言っても、公的な関与はあります。任意後見契約の効力が発生するためには、

①公正証書の作成、登記。

②ご本人の判断能力が不十分な状況になったときに、家庭裁判所へ任意後見監督人(任意後見人を監督し、定期的に家庭裁判所へ報告する人)の選任を請求すること(請求できる人はご本人、4親等内の親族、任意後見受任者です)。

③家庭裁判所により任意後見監督人が選任されること。

が必要です。
 そもそも、任意後見契約は、ご本人が信頼できる人に対して財産管理などを委託する訳ですが、そうは言っても、その人が任意後見人となった後に不適切な管理をする恐れもあることから、その人を監督する人を裁判所が選ぶわけです。



倒産・債務整理

※現在取り扱っておりません


自宅を手放さずに借金を整理する方法

5年前、30年の住宅ローンを組んで自宅を購入しましたが、2年前、急な病気で3ヶ月入院することになり、治療費や生活費などのため消費者金融に300万円の借金を作ってしまいました。
 現在病気は完治し仕事も順調なのですが、住宅ローンと生活費を差し引くと毎月4万円程度の余裕しかなく、妻子のため自宅を残しながら借金を整理したいのですが、方法はありますか?
借金の整理にはいくつかの方法がありますが、自宅を残すとなると一般的に任意整理か個人再生という手続きを取ることになります。前者は、住宅ローンには手を付けず、消費者金融の借金のみを話し合いで整理する方法です。
 弁護士が付いた場合、数年で分割して支払うようになりますが、今回のケースでは、毎月の支払額が多くなってしまうため、難しいかもしれません。
 これに対し後者は、裁判所を利用した手続きです。住宅ローンも届け出ますが、これにはあまり変更を加えず、これ以外の借金を法律に基づき圧縮して、原則3年間で分割払いします。この返済が完了すると、実質的に圧縮前の残債務の支払いは免除されます。
 今回のケースで住宅の資産価値がオーバーローンの状態であるとすれば、支払総額が圧縮により100万円になり、これを3年間で分割払いすることになりますので、1か月あたり3万円弱の支払額で済み、かなり利用しやすい手続になると思います。



貸金業者から過払い金が戻ってくる?

長年にわたり貸金業者から借金をしていると、お金が戻ってくる場合があるという噂を聞きましたが、本当でしょうか。
貸金業者に借金を返済した場合、最高裁判決などに基づき再計算すると、貸金業者の計算より元本が少なくなることが多く、場合によってはお金が戻ってくることもあります。
 今回はその仕組みを説明します。
 まず、貸金業者の融資には利息が付きますが、その利息を定める法律の1つに「利息制限法」があります。これは、元本が10万円以上100万円未満の場合、上限利率を18%とし、これを超える利息は無効と定めています。
 しかし、この法律には罰則が無いため、貸金業者の多くは、貸出金利をいわゆる「出資法(罰則付)」で定める上限金利29.2パーセント(かつては40.004パーセントでした)の範囲内で設定しています。従って、貸出金利と利息制限法の上限金利との間にグレーゾーンが生じるのです。
 このグレーゾーンについて、最高裁判所は、「その部分の利息が元本に充当される」と判決しました。この判決に基づいて再計算すると、グレーゾーンの利息が元本に充当されるため、長年にわたり支払いを継続してきた場合、貸金業者の計算より元本が大きく減ることになります。
 よって、元本が消滅した後は、あたかも貸金業者にお金を預けているかのような状況になり、貸金業者に対し、その払い過ぎた金銭の返還を求めることができるようになるわけです。



<シリーズ>債権回収の実務


債権回収の実務(パート1)

 今回より、商取引において代金が未払いとなった場合の一般的対処法について、ご説明いたします。
 まず、商取引をするなかで、期限に代金を支払って貰えないということが起こりますが、このような事態に遭遇した時、まずやっておくべきことは、将来、裁判所等で利用するための証拠を残しておくことです。しばしば商取引の現場では、口頭や見積書だけで取引をされているケースをお見受けしますが、契約を履行したにもかかわらず代金の支払いが遅れ、取引先に問い合わせたところ、「1か月待ってほしい。」とか、「もう少ししたらお金が入るから。」等と言い訳された場合、もちろん取引内容、代金額、期限など記載して支払を約束した念書等を作成させることができれば良いのですが、そのような書面を作成して貰うことができないような場合でも、その取引上、本来、作成されるべきであった書面(例えば見積書に対する発注書やその商品の受取書等)を、この際、作成して貰うようにして下さい。
 このような場面であれば、従来からの得意先であっても、申し訳ないと感じているはずですから、その取引上、本来作成すべき書面であれば、億劫がらずに作成して貰えると思いますし、このような書面があれば、万が一、後日、支払遅延が続いた場合にも法的手続きが取り易くなるからです。
 次回以降は、代金未払のケースについて、催告書の作成方法、支払督促、少額訴訟、民事訴訟、仮差押及び強制執行等の手続きについて、順次、ご説明したいと思います。



債権回収の実務(パート2)

 今回は催促書の作成方法、特に催告書を「配達証明」付きの「内容証明」郵便で差し出す場合について、ご説明します。
 催告書は、差出人の相手に対する請求の意思を示すことになるだけでなく、将来それでも相手が支払わなかった時の裁判等で利用するための証拠になります。そのため、催告書は第三者にも請求の根拠が分かる内容にする必要があります。誰と誰の間で、いつ行われた、何の取引を原因として、いくらを、いつまでに、どのような方法(持参または振込など)で支払うよう求めるのかを、文章上明確にしてください。
 そして「内容証明」とは、この催告書を差し出したという事実を郵便局が証明する制度であり、「配達証明」とは、郵便物を配達したという事実を郵便局が証明する制度です。
 この2つの制度を併せて利用した催告書を相手に差し出すことによって、相手が「その催告書は届いていない」などと言って争うことを防ぐことができます。この内容証明郵便は、

①同じ内容の催告書3通(相手へ配達する分が1通、郵便局が保存する分が1通、差出人が保存する分が1通)と、差出人と相手の住所氏名を催告書の通りに記載した封筒1通を、郵便局に提出する。

②1行20字以内、1枚26行以内の文章で。2枚以上にわたるときには、綴じ目に契印をする。

③記号や句読点も1字と数えるが、記号によっては、例えば、③は2字、⑩は3字と数える。

④写真や図面等は同封できない。

等々の注意が必要です。
 また、内容証明郵便を差し出すときには、郵便局で訂正を求められることがおおいので、その場で訂正ができるように、催告書と同じ差出人の印鑑を持参するのが良いでしょう。
 なお、郵便局へ行かなくても、インターネットで24時間受け付けている電子内容証明サービスもありますが、専用ソフトウェアのインストール等の手続きが必要です。
 次回からは、債権回収のための裁判所を利用した各種手続きについて、順次ご説明いたします。



債権回収の実務(パート3)

 今回は、民事保全手続としての仮差押えについてご説明いたします。
 金銭債権の債権者は、債務者に対して、訴えを提起して勝訴判決を受け、判決の確定を経て、初めて強制執行に着手し得ることになります。その間に債務者が財産を隠匿したり、資産の現状を変更してしまったりすると、せっかく債権者が勝訴判決を得ても強制執行をすることができないという事態が生じ得ます。このような不合理を避けて、債務者の財産の現状を維持し、将来の強制執行を確保する手段として認められているのが「仮差押え」です。例えば、債権者が債務者所有の不動産を仮差押えした場合、債務者は、その不動産につき、売買等の譲渡行為や抵当権等の担保権設定行為その他一切の処分をすることが制限されます。
 仮差押命令の要件としては、①被保全権利(債権者の債務者に対する金銭の支払を目的とする債権)と ②保全の必要性(強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、または強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに認められる。)がありますが、保全事件においては、その緊急性の要請から、厳密な証明までは要求されません。ですから、一般的には、ひととおり客観的な証拠が揃っていれば、仮差押え命令が出ることが多いです。
 ただ、こういった簡易な手続で保全命令が発せられるので、ときとして請求権の完全な確認に欠けることが生じ得ます。そのため、一般的に仮差押えにより債務者の被る可能性のある損害を填補する担保を立てることが発令の要件とされており、その担保を準備できなければ仮差押え命令は発せられないので注意が必要です。
 次回は、訴訟手続についてご説明いたします。





<シリーズ>所長が考える尊厳死


最近よく聞きますね「安楽死」「尊厳死」

最近、安楽死とか、尊厳死という言葉を聞きますが、どのような議論がなされているのでしょうか。
これらは議論されている場面が少し異なるように思います。
 まず安楽死ですが、最近ベルギーが、法律で子どもにも安楽死を認めたという新聞記事が出ました。これは、不治の病に罹患し、痛みなどが耐えられない場合に、一定の厳しい要件の下、医師が死期を早める措置をとることを認めたという報道でした。
 次に、尊厳死ですが、日本尊厳死協会が「(尊厳死を)人の不治かつ末期に際して、自己決定をして自分の死に方、延命措置の不開始または中止を求めた自然死のこと」と定義していたり、また最高裁判所も医師が昏睡状態にある患者の生命維持装置を取り外すなどの処置を取った事件に関し、その違法性判断のため、「回復可能性」「余命」「被害者(患者)の推定的承諾」を問題にしたように、その議論は、人の「不治」かつ「末期」の場面で為されることが多いと思います。
 近時、殆どの方が病院で亡くなるようになり、親族の最後の姿を見て、多くの方が「不治」かつ「末期」の段階での延命治療を考えざるを得なくなりましたが、これが尊厳死の問題なのです。この問題は、あらゆる人がいずれ直面する死に関する問題ですが、自分の末期には考えることも、意思表明することも難しいことが多いので、そうなる前に考えておくべき問題とも言えます。次回以降、少し尊厳死の問題に焦点を当てて解説をしたいと思います。



最も肝心なことは、「本人の意思の尊重」

前回、尊厳死の問題を取り上げていましたが、私は、できるだけ長く生きたいので、延命治療をきちんと受けたいと思っております。このような考え方は、尊厳死と馴染まないのでしょうか。
まず尊厳死の問題は、傷病者に人間としての尊厳さを保って死ぬ権利が認められるべきである、という観点から議論されてきたもので、最も肝心なことは、「本人の意思の尊重」にあります。
 すなわち、尊厳時の議論は、「不治」かつ「末期」の段階で、どのような治療を受けるかを、本人の自己決定に委ねるということが本質になります。従って、できるだけ延命治療を受けたいという意思も尊重すべきであり、あなたのような考え方も尊厳死の議論と矛盾するものではありません。
 そもそも、尊厳死の問題が注目されるようになったのは、現在、殆どの方が、亡くなる直前を病院で過ごされるところ、病院は患者の治療を目的にしますので、その患者が「不治」かつ「末期」に至った際に、延命治療が施されることが通常で、これに異論を唱えたことにあると思います。
 すなわち、人が怪我をしたり、病気に罹ったりした場合、適切な医療を受け、これを治療することになりますが、「不治」かつ「末期」の段階において、どのような医療を希望するかという問題(単純に延命治療を希望するかという問題のみならず、実際の延命治療の内容の取捨選択の問題も重要です。)を改めて考えたのが尊厳死の問題になります。



「終末期医療」、家族との情報共有が大切

尊厳死に関する問題は、もっぱら人の終末期医療の選択に関する議論のようですが、この「終末期」とは、どのような状態を言うのでしょうか。
まず、厚生労働省は、「終末期」を定義付けしていません。そもそも、人の死因には、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患等があり、その他にも様々な疾病があります。そして、さらに細かく具体的疾患を考えますと、「終末期」は、人それぞれに考えざるを得ないのです。しかし、事前に終末期医療を考えるには、予めイメージを掴む必要があり、それには掛かりつけの医師と話し合ったり、文献等をを読み、とても難しいことだとは思いますが、各人が具体的なイメージを持つ他ないと思います。そして、事前に「終末期」に際しての医療の選択を考えるのであれば、ご自身だけでなく、家族との情報共有も大切になると思います。実際に終末期医療を選択する際、ご自身が意思を言えなければ、家族に意思を伝えて貰うほかないからです。家族と「死」をテーマに話をすることは、なかなか難しいことかもしれませんが、「ピンピンコロリが一番」等という簡単な話題をきっかけに、一歩進めて、家族と「終末期」のイメージを話し合い、その際に希望する終末期医療のお話をされては如何かと思います。
 次回は、終末期医療の選択に関する意思表示(リビング・ウィル)について、遺言書との違いや法的意味等をご説明したいと思います。



「終末期医療」は事前の話し合いが重要です

私は遺言書を作成しておりますが、ここのところで解説されている終末期医療の選択に関する意思表示(以下、「リビングウィル」とします)は、これに記載しておけば良いでしょうか。
リビングウィルは、遺言書を作成されている方でも、これとは別に作成した方が良いと思います。それは、遺言が財産なり何なりに関して、自分の死後に効力を発生させる為の意思表示であり、一般的に生前にその内容が表明されることを予定していないからです。私が遺言書の作成をお手伝いする際も、遺言者及び遺言執行者(予定者)だけと協議することが殆どで、相続人になる遺言者の子どもが全員立ち会って、遺言書を作成した等という経験はありません。これに対して、リビングウィルは、専ら親族や医師等の医療従事者に対する終末期医療の選択に関する意思表示ですから、そもそも自分が生きている内に表明されなければ意味がないのです。
 次に、リビングウィルは、これを見た医師にとっては、その患者が過去に行った意思表示になりますので、患者が終末期に意思表示できない場合、医師は、そのリビングウィルのみならず、同居の親族等から事情を聞くなどして、その患者の意思を総合的に判断することになります。したがって、リビングウィルを記載した書面を作成された方でも、事前に親族や担当医師と話し合いをしておき、終末期にその意思が実現され易い環境を作っておくことが大切です。次回はリビングウィルの作成方法等について述べたいと思います。



書面は、予め医者や家族と確認しましょう

終末期医療の選択に関する意思表示とは、どのような内容の書面を作成しておけば良いのでしょうか、また、作成した書面をどのように保存しておけばよいのでしょうか。
これまで、このような意思表示として一般的に検討されてきたのは、終末期における死期を伸ばすだけの延命措置を拒否することを内容とする意思表示であり、日本公証人連合会と日本尊厳死協会のホームページにて、その文例が紹介されておりますので、参考にしてみて下さい。
 なお、現在、前回までの連載でお伝えしたように、罹患している疾病等により終末期の状況が異なり、また様々な治療方法があることから、個別具体的な選択等の意思表示をする必要性のあることが認識されており、その意思を反映した書面をどのように作成するかが検討されています。
 次に保管の場所ですが、万が一の時に、家族や医療従事者に作成した書面を見せ、自分の意思を確認してもらう必要がありますので、複数作成して、見つけやすい場所に保管したり、予め家族に渡しておくと良いと思います(公正証書を作成した場合には、これをコピーして、証書の保管場所を記載してから家族に渡しておくと)



尊厳死と向き合う~さまざまな問題点~

 尊厳死に関する連載を行って参りましたが、この間、調査をする中で、これまで触れることのできなかったことを少し述べて、今回の連載を終わりにしたいと思います。
 まず、「2025年問題」と尊厳死の関係です。そもそも西暦2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、それ以降、4人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎えることになります。そのような状況で、医療設備の不足という事態が予想されることから、現在、厚生労働省では、その対策の1つとして、自宅での看取りを可能とする環境作りを計画しております。そして、そのような状況では、多くの方が、自ら及び家族の死を、病院任せにすることができなくなりますので、尊厳死の問題は、より身近な問題になることが予想されます。
 次に、尊厳死に反対ないし慎重な意見をお持ちの方が予想以上に多かったことも述べておきます。
 そもそも、人の生死観は様々ですが、そのような一般論以外に、難病を抱える親族と生活をしている方々が、尊厳死の法則化を、生に対する確信をぐらつかせる虞(おそれ)あるものとして反対していることが印象的でした。
 また、シンポジウムにおいて何人かの医師の意見も聞きましたが、例えば終末期と思われる患者に人工呼吸器を装着することも、それが直ちに尊厳死を阻害するものと考えるべきではなく、具体的な症状等を検討し、真摯に回復の可能性を探る必要性があることを訴えていたことも印象的でした。
 私は、今回の連載にあたり、尊厳死が簡単な文章作成で済むような問題ではなく、生に対する尊厳を前提に、本人が、その家族や医療関係者と真摯に協議することが重要なことを教わりました。